コロナ禍の影響により、人々の社会生活は大きく変わりました。中でもビジネスマンの「働き方」は、従来のカタチから想像できないほどの大きな変貌を遂げつつあり、正に「働き方改革改革」といえる状況を迎えています。

こちらの記事では、政府の施策の一つでもある「働き方改革」について、その定義や目的、そしてなぜ今これに取り組む必要があるのか等と共に「新しいカタチの働き方」を解説していきます。

「働き方改革」とは?

「働き方改革」とは、労働者が各自の事情に応じて柔軟で多様な働き方を選択可能な社会を実現させるための政策です。

最初の活動として、平成29年3月28日に、日本政府は「働き方改革実行計画」を策定しました。

その際の安倍総理(当時)の発言が、以下のように記録されています。

「働き方改革実行計画の決定は、日本の働き方を変える改革にとって、歴史的な一歩である」

出典:「第10回働き方改革実現会議(平成29年3月28日)」における総理発言より抜粋

この発言からも、日本政府が特に重要視している政策の一つであると考えられます。

次の活動として、平成30年7月に「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が成立しました。つまり「働き方改革実行計画」を法的根拠として下支えするための法律が用意されました。

本法案成立時の安倍総理(当時)の発言が、以下のように残されています。

「長時間労働を是正していく。そして、非正規という言葉を一掃していく。子育て、あるいは介護をしながら働くことができるように、多様な働き方を可能にする法制度が制定された」

出典:「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」の成立についての総理会見(平成30年6月29日)より抜粋

つまり、総理自らが「長時間労働」や「非正規雇用」を問題視していること、そしてこの法制度が「多様な働き方」を実現可能と考えていることが伺えます。

それでは、現状の日本社会が抱えている課題、そして「働き方改革」を通じてどのように解決しようとしてるか、を「働き方改革実行計画」を参考に解説していきます。

日本社会が抱えている労働に関する課題とは?

先ほどの実行計画の中で、「日本の労働制度と働き方にある課題」として以下のものが挙げられています。

「正社員」と「非正規社員」との賃金格差

いわゆる「同一労働同一賃金」の問題です。「非正規社員」は、同一の労働内容にもかかわらず正当な処遇を受けていないという思いから、労働意欲の減退につながることが問題と考えられています。

それでは、実際にどの程度の賃金格差があるのでしょうか?

厚生労働省の「平成27年賃金構造基本統計調査」で、「正社員」と「非正規社員」の賃金の比較がなされています。

「非正規社員」の賃金は、企業規模10人以下の中小企業では「正社員」よりも2~3割減程度ですが、1000人以上の大企業では、最大で2.5倍もの開きがあります。

出典:働き方改革実行計画概要(参考資料)より抜粋

長時間労働

「長時間労働」の問題は、総理の発言でも言及されていましたが、健康面での影響だけでなく、仕事と家庭生活との両立、女性のキャリア形成や男性の家庭参加といった「多様な働き方」を阻害する要因ともなっています。

また長時間の労働にもかかわらず、「労働生産性」が先進諸国でも極めて低いことも問題視されています。

出典:働き方改革実行計画概要(参考資料)より抜粋

こちらのグラフからも、「労働者一人当たり年間総労働時間」が日本よりも低いイギリス、フランスやドイツが、日本以上のGDPを実現しており、日本の労働生産性が低いことが際立っています。

単線型のキャリアパス

従来の日本社会では、結婚、子育てや介護といった様々なライフステージに応じて、その時の事情に合わせた仕事への柔軟な変更が困難でした。最初に入社した会社に定年まで勤める、いわば「単線型」のキャリアパスが一般的でした。

しかし、労働者の働き方のニーズは多様化しています。特にコロナ禍での情勢の中で、従来は中々導入が進まなかった「テレワーク」や「ワーケーション」等が一般化しつつあります。

これらの課題に対して、「働き方改革」ではどのようなテーマと対応策が検討されているのかみていきましょう。

「働き方改革」によるテーマと対応策

実行計画の中では様々なテーマと対応策が提起されていますが、主なものについて確認していきます。

非正規雇用の処遇改善

非正規雇用労働者は、約296万人(労働者全体の15.6%)いると言われています。これらの対象者への対応策としては、「同一労働同一賃金」の実効性を裏付けるための法制度の整備、非正規雇用労働者の正社員化の推進等が検討されています。

賃金引上げと労働生産性向上

賃上げ率は、1.70%(2010-2012年の平均)程度ですが、この値を上昇させるために、企業への賃上げ要請、生産性向上の支援することで賃上げしやすい環境の整備等の対策が検討されています。

長時間労働の是正

長時間労働の具体例としては、週60時間以上の労働者が7.7%、特に30代男性の場合は14.7%という調査結果があります。

この対策として、法改正による時間外労働の上限規制が導入されました。この法律は、大企業では2019年4月から、中小企業では2020年4月から施行されています。

残業時間の上限としては、原則として「月45時間」、「年360時間」と制限されており、臨時的な特別の事情がない限りこれを超えることは認められていません。

また臨時的な特別の事情であっても、「年720時間以内」、「複数月平均80時間以内」、「月100時間未満」を超えることが認められていません。

柔軟な働き方がしやすい環境整備

コロナ禍以前では、テレワークの未導入企業が83.8%でしたが、2020年以降は大幅に増加しているものと予想されます。

今後の対策としては、テレワークに関するガイドラインの刷新とその導入支援の一層の推進、副業や兼業の推進に向けたガイドライン策定等が挙げられています。

まとめ

厚生労働省では、以下のような特設サイトまで作成しており、その力の入れ具合が伺えます。

出典:働き方改革特設サイト

「働き方改革」は、「一億総活躍社会」を実現するために不可欠なチャレンジという「新しいカタチの働き方」でもあります。

これまでご紹介してきた通り、日本には「労働生産性の向上」や「長時間労働の是正」等の様々な課題があります。

しかし、コロナ禍による社会の大きなパラダイムシフトを機会に、「働き方改革」を進めて多様な働き方を実現し、労働者の視点に立ったより魅力ある職場を目指してみてはいかがでしょうか?