「働き方改革って聞くけど、どんなものなのかな?」、「要点だけ知りたいけど、いまさら聞きづらい…」、「うちの会社はどんな対策をすればいいの?」、「従業員の満足度が上がるのはわかるけど、生産性は下がってしまうのでは?」

こんなお悩みをお持ちではありませんか?

実は、働き方改革の内容の基本をおさえれば、理解するのはそれほど難しくありません。ここでは、働き方改革とは何かを解説し、その後、働き方改革によって何が変わるのかについて解説していきます。

読み終えていただければ、働き方改革についての理解が深まるだけでなく、実際に社内での対策にも活用できます。その結果、従業員満足度が上がり、しかも労働生産性が上がることが期待できますし、さらに人手不足の中、離職率は下がり、採用の応募が増えることもあるでしょう。

働き方改革とは

働き方改革とは、少子高齢化による労働力不足や、働く人のニーズの多様化といったことを背景に、多様な働き方を可能にする社会を目指すための改革です。

厚生労働省によると、「働き方改革」は、働く方々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革と定義されています。

2019年4月1日には、働き方改革関連法が施行され、大企業・中小企業が経営するうえで取り組まなければならない課題となっています。

働き方改革の背景

人口の増加・減少率が現在の変わらなければ、日本の総人口が減り続け、労働力不足が生じるからです。具体的な数字を見てみましょう。

総人口の減少

内閣府の将来予測によると、

・2013年:1億2,730万人

・2060年:8,674万人

・2110年:4,286万人

(出典:内閣府「人口・経済・地域社会の将来像」

労働力人口の減少

総人口の減少に伴って、労働力人口(生産年齢人口)も大幅に減少します。

・1995年:8,726万人

・2010年:8,173万人

・2027年:7,000万人を下回る

・2051年:5,000万人を下回る

・2060年:4,418万人

(出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」

このように、労働力人口が大幅に減少することは、国力の低下につながるため、政府は働き方改革を進めることにしたのです。

働き方改革の概要

対応策の概要としては以下のとおりです。

・働き手を増やす

・出生率の上昇

・労働生産性の向上

以下、それぞれ解説していきます。

働き手を増やす

働き手が増えれば労働力不足が解消するからです。直接的かつ単純な解決法ですね。

「足りないから増やす」ではどのように増やすのでしょうか?

たとえば、定年退職した高齢者や専業主婦といった、これまで日本の会社のメインストリームではなく周縁にいた人たちに働いてもらうという方法です。働けるのに働かなかった人たち、つまり、潜在的な労働者と言い換えることができます。そんな彼ら・彼女らに働いてもらうことで、労働力不足を解消することが狙いです。

出生率の上昇

出生率が増えれば、将来の労働力不足が解消できるからです。

たとえば、今出生率が上がれば、20年後、30年後の労働力が増えることになります。とても時間がかかりますが、日本の将来に対して安心感が持てますね。

労働生産性の向上

労働生産性が上がれば、不足した労働力を補うことができるからです。

たとえば、5人で行っていた仕事を3人でやらなければならなくなったとき、すぐに増員が見込めない場合は、やるべき仕事ややる必要がない仕事を区別して、いかに効率よく仕事をするかを考えると思います。

このように、従業員の能力をフルに活用して無駄をできるだけ省くことで、生産性は上がっていくようになります。

では、これらの対応策をより具体的に実現するために、どのような課題を乗り越えなければならないのでしょうか。

働き方改革によって何が変わるのか

働き方改革によって変わることは、細かくはたくさんありますが、ここでは大きく3つご紹介します。

・長時間労働の解消

・正規・非正規の不合理な格差是正

・柔軟な働き方ができる環境

以下、それぞれ解説していきます。

長時間労働の解消

これまで日本人は働きすぎだったのです。この点は国連からも指摘されていました。

長時間労働は、極端な場合、過労死・過労自殺という形で人の命を奪うことがあります。また、うつ病などの精神疾患や心臓疾患を引き起こすこともあります。そこで時間外労働の上限規制がされることになりました。

具体的には、時間外労働の上限は、原則として、月45時間・年360時間となりました。ちなみに、月45時間とは、1日につき2時間程度です。

特別な事情がある場合でも、年720時間・複数月平均80時間・月100時間を超えることはできません。ちなみに、月80時間とは、1日につき4時間程度です。

このように、健康で働きやすい環境の整備をすることが今回の改正で企業に求められることとなりました。

正規・非正規の不合理な格差是正

働き方改革では、同一企業での正規・非正規の労働者間のの不合理な待遇差をなくすことが目標として掲げられています。

ここで政府が改革の目玉として掲げる「同一労働同一賃金」があります。「同一労働同一賃金」とは、同じ付加価値を生み出した人に同じ賃金を支払うべきとする考え方です。

たとえば、ベテラン非正規従業員の給料が、新人正規社員よりも著しく低いという場合、是正するべき対象となります。このように、不合理と認められる格差を是正して、個々の働き方を選べるようにすることを目指しています。

柔軟な働き方ができる環境

これまでの日本での働き方はあまりにも硬直的でした。

具体的には、これまでは同じ場所で9時から17時まで働くのが普通でしたが、このように働く場所や時間が硬直的だと、育児や介護などのために会社を辞めざるを得ないことになってしまいます。これでは、せっかく能力のある人材や労働力を確保できなくなってしまいます。

そこでその解決策として、リモートワークの導入が注目されています。こうした柔軟な働き方を推進することで、企業としても優秀な人材の確保や離職の防止ができるため、新たな働き方として期待されています。

まとめ

ここまでの内容をまとめます。

・働き方改革とは、少子高齢化による労働力人口の減少を背景に、従来の労働法制の見直しをすること。

・働き方改革によって、従来の課題とされていた、長時間労働、正規非正規の不合理な待遇差、硬直的な働き方を改善されることが期待できる。

働き方改革は、これまでなかなか労働参加しづらかった人たちにも門戸を開き、働きやすくすることを目的とした政策です。一つひとつの企業は、政府の意図を意識して、従業員の多様な働き方を実現できるように、さまざまな対応策を検討・実施しなければなりません。