新しい生活様式」への対応が求められる社会情勢の中で、「オンライン会議」へのシフトが進んでいます。そのため紙の名刺を交換する機会が減っているのは事実ですが、逆にフェース・ツー・フェースで対話する機会の重要性がかつてないほど高まっているともいえます。

今こそ名刺交換のマナーをしっかりと習得し、ビジネスを成功させるための「最初のステップ」として活用していきましょう。

こちらの記事では、名刺交換のタイミングを「交換前」、「交換中」、「交換後」の三段階に分け、それぞれで「OKマナー」、「NGマナー」について解説していきます。貴重な対面での会議時に最初のステップでつまずかないために、名刺交換のマナーを改めて学んでいきましょう。

名刺交換のマナー(交換前)

<OKマナー編>

「名刺入れ」を手元に準備する

名刺交換する前に「名刺入れ」を手元に準備しておきます。いざ名刺交換の際に慌てて鞄から名刺入れを取り出す、といった行為はできるだけ避けましょう。精神的にも動揺しますし、その後の会議の進行にも影響を与えてしまいます。

さらに、会議相手の人数も事前に把握し、人数分の名刺を取り出して名刺入れの上に置いておくとより好ましいです。なお「名刺入れ」は、革製でビジネスの場に相応しいデザインのものを選びましょう。

名刺を渡す順番に並ぶ

相手側の役職などを考慮して、自社側の参加者は、名刺を渡す順番に並んでおきます。原則として、役職の上位者同士での交換からスタートします。続いて、役職の降順に交換を進めていきましょう。名刺交換の前段階では、相手側の役職が不明な場合があります。その際は、名刺交換を進めながら受取済の名刺を確認しながら、自社側の並び順も調整していきます。

<NGマナー編>

「テーブル越し」で名刺交換する

会議室のスペースが十分でなく「狭い」といった都合で、つい「テーブル越し」に名刺交換しがちですが、これはNGです。名刺交換する直前に、テーブルを挟まない位置を確保するといった「ポジショニング」を意識しましょう。また自社側の参加者から相手側に近づくように移動しておくのも重要です。この際にも名刺を渡す順番を意識して並ぶようにします。

財布や上着等のポケットから名刺を取り出す

名刺を「名刺入れ」以外の場所から取り出すのは、原則としてNGです。名刺自体が汚れてしまったり、ふやけたりするという問題もありますが、なにより丁寧に準備していないことで相手を軽んじているような印象を与えかねません。

名刺を忘れる・名刺を切らす

名刺を忘れたり、社外での会議が連続して名刺を切らしたりすることがあります。その場合は、「ただいま名刺を切らしておりまして」と謝罪しながら名刺を一旦受け取るようにします。慌てがちのシチュエーションですが、自分の会社名と氏名は名乗ることは忘れないようにしましょう。

名刺交換のマナー(交換中)

<OKマナー編>

「立った状態」で名刺交換する

ビジネス的な挨拶をする際の原則ではありますが、立ち上がった状態で名刺交換します。つまり会議開始前の待ち時間で着席していても、相手の入室時に立ち上がり出迎えるようにするのが重要です。

「受注者側」から先に名刺を差し出す

「受注者側」とは、(「発注者側」となる)顧客からお金をもらう側になります。一般的な意味(年齢、役職等)での「目上」とは異なり、ビジネスの場では「発注者側」が「目上」となる点に注意しましょう。

名刺を両手で差し出す

最初に、名刺は「両手で」持って相手に見やすい位置に差し出します。名刺入れの上に名刺を置くケースもありますが、いずれにしても相手が自分の名刺を視認する「間」を設けるようにしましょう。

次に、相手も名刺を差し出してきたタイミングで「右手」だけで名刺を持ち替えながら、「左手」で相手の名刺を受け取り、名刺交換を成立させます。名刺を左手で受け取った際には、名刺の文字を指で隠さないように注意しながら名刺入れの上に重ねていきます。細かい仕草よりも、相手の名刺を丁寧に扱うこと自体が重要なマナーといえます。

自分の「会社名」、「所属」、「氏名」を伝える

名刺を相手に差し出した際には、名刺の記載情報に沿って「会社名」と「氏名」を相手に伝えます。会社の移転による住所変更や役職名変更等で、名刺の記載情報と異なる点がある場合は、その点を訂正することも必要です。

名刺交換した相手の名前を復唱する

名刺交換時には、「〇〇様ですね」という風に相手の名前を復唱して確認します。相手の「氏名」の読み方が不明な場合はもちろんですが、相手の所属する部署名が一般的な名称ではない場合(例:「創造環境推進部」、「ビジネス応援隊」等)には、会議前にどういった部署なのかを確認しておくと良いでしょう。

<NGマナー編>

「目上(発注者側)」から先に名刺を差し出された

原則として、名刺は「目下(受注者側)」の人から差し出しますが、「目上(発注者側)」から差し出されてしまうケースがあります。その場合は、「頂戴いたします」といって速やかに受け取り、続けて「申し遅れましたが」と一言添えながら名刺を差し出すようにしましょう。

相手の名刺を催促した

タイミングが合わずに名刺の交換ができなかった相手や、会議に途中参加した相手に対して、会議中に名刺を催促するのはNGです。

そういった場合には、会議の休憩時や会議終了後等の一区切りできたタイミングで、自分から相手に近付いていき、「恐れ入りますが、お名刺を1枚頂いてもよろしいでしょうか?」と丁寧にお願いして名刺交換しましょう。

「無言」で名刺を受け取った

名刺を差し出す際に名乗るだけでなく、受け取る際も一言「頂戴いたします」と添えて無言でいることは避けましょう。

相手の名刺を着席前に名刺入れにしまった

立った状態で名刺交換中は、名刺はテーブルの上には置かず、名刺入れに重ねて持ったままでいます。名刺入れにすぐにしまう行為はマナー違反とされています。

名刺交換のマナー(交換後)

<OKマナー編>

受け取った名刺をテーブルの上に並べる

相手の着席位置に合わせて、受け取った名刺をテーブルの上に重ならないように並べます。この際には、自分から見て相手の着席位置が分かるように配置するのがポイントです。これで相手の顔と名前を一致させて、会議中にも名前の呼び間違い等を防止することができます。

テーブルのスペースの都合もありますが、可能であれば一番役職が高い人の名刺だけは名刺入れの上に置くのが望ましいです。もし一対一の会議の場合は、名刺は必ず名刺入れの上に置きましょう。

<NGマナー編>

着席後に名刺入れにしまう

名刺交換が終了し、着席した後でも名刺入れにすぐにしまうのはNGです。

資料で名刺を隠してしまう

会議中、テーブル上に資料を広げることがありますが、原則として、資料で名刺を隠さないように注意しましょう。テーブルのスペースが不足している場合は、あまり注意しすぎると会議の進行にも影響するため、相手に了解を得てから名刺入れにしまいます。

さいごに

名刺交換のタイミングを「交換前」、「交換中」、「交換後」の三段階に分け、それぞれで「OKマナー」、「NGマナー」についてご紹介してきました。

日本独特のビジネス習慣である「名刺交換」ですが、今後は「オンライン名刺」等にシフトしていく可能性は否定できません。しかし、対面での会議がなくなるわけではないので、紙の名刺交換が完全に無くなることはないでしょう。

今回ご紹介した名刺交換のマナーを身に着けておけば、貴重な機会となったフェース・ツー・フェースで重要な会議の場でも落ち着いて臨むことができます。ビジネスの成功に向けた「最初のステップ」である「名刺交換」について、マナーを守りながら積極的に活用していきましょう。